安いニッポン-価格が示す停滞-(著:中藤玲氏)を読み終えた感想

日経新聞で連載されていた安いニッポンが書籍化されたので手に取ってみました。
この本を読むことで、現在の日本の状況の異質さ、深刻さを認識することができます。
個人レベルでできることは少ないですが、
多くの人が今の状況を変えたいと思わなければ、
現状を打破することは難しいでしょう。
ぜひこの本を読んでこれからの日本について考えてください。

デフレの負のスパイラルに陥った日本

日本企業は価格競争に走った結果、
適正な値付けができていないとのことです。
価格を下げるために、生産性を上げるのではなく、
人件費の抑制を押し進めたので、
非正規雇用を大量に生み出し、賃金も上がっていません。
したがって、賃金が上がらないことには消費も増えませんから、
経済は委縮するばかりです。
消費が増えなければ企業の利益も増えませんから、
少しでも利益を残そうと、企業は再びコストカットを考えるので、
さらに状況は悪化の一途をたどるわけです。

成長しない日本

海外では物価や賃金は上がるものという考えが常識です。
このことからも日本の異質さが伺えます。
日本で商品の価格を引き上げたら、
消費者からのブーイング待ったなしです。

実際はステルス値上げ、便乗値上げなどがされてますが。
価格はそのままで内容量を減らすというシュリンクフレーションなんてものあります。

話が逸れましたが、
海外では物価上昇以上に賃金が伸びているので、
多少の値上げなど気にしていないのです。

日本では失われた30年と揶揄されるように、
長らく賃金が上がらなかったわけですから無理もありません。
物価が上昇すれば生活が苦しくなると予想されるので、
必然と値上げに対して反発が強くなります。

企業も消費者も明るい未来を描けていないからこそ、
物価も賃金も上げることができないのでしょうね。

日本魅力は安さ

コロナの感染拡大が始まる前は
訪日外国人が過去最多を更新していました。
実は日本が人気の理由は
日本の魅力よりも「安さ」にあります。
かつて日本人が安いからといって
東南アジアへ旅行に行っていた感覚と同じです。

世界の主要都市のホテルの値段を比べると
日本はひときわ安いです。
私たちからすると国内の高級ホテルなんて高くて泊まれたものではありませんが、
世界と比べるとそれでも安い方であり、世界の成長から取り残されていることがわかります。

安かろう悪かろうなんて言いますが、
今の日本は安かろう良かろう状態で、
海外から見れば格好の旅行先になるのもうなずけます。

日本人が海外へ出稼ぎに行く時代がくるかも

アジアの賃金の低い国から出稼ぎに来ている外国人もいますが、
このままでは日本人が出稼ぎに行かなくてはならない時代が来るかもしれません。

国内で消費する分には関係ないと考えもあると思いますが、
このまま日本が政界から取り残されることになれば、
円安が進行するのは必至です。

日本は多くの資源を輸入に頼っているので、
円安が進めば、原材料価格が高騰し、
その影響を価格に転嫁しなければなりません。

そうなると、賃金は増えないのに物価は上昇するという最悪の事態に陥ります。
その時、所得を得るために諸外国へ出稼ぎに行く人も出てくるでしょう。

言葉の壁など考えると、今から準備しておかないと
いざというときに行動を起こせそうにないですね。

個人レベルでできること

失われた30年を経て、何も変わらなかったわけですから、
個人でできることなんてないようにも感じます。
しかし、マインドの部分は変えていかなければならないと感じています。

私自身、倹約家なので、安いことは歓迎すべきことなのですが、
長期的な視点に立つと、質に見合った対価を支払うべきと
考え方を改める必要があると思っています。

もちろん、賃金が上がらない状況で物価だけ上昇するのは
生活が苦しくなる一方なので、
そこは政府にしっかり支援してほしいです。

最後に

この本を読んで、現在の日本の状況の異質さ、深刻さを認識しました。
個人レベルでできることは少ないですが、
多くの人が今の状況を変えたいと思わなければ、
現状を打破することは難しいでしょう。

賃上げ、価格上げはどちらからすべきかという議論もあるかと思いますが、
そこはやはり政府主導でやってもらうしかないですね。
今の日本の状況では企業も消費者もない袖は振れない状態です。
失われた40年にならないように。

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